AIに車整備の仕事は奪われる?僕が今、正直に思っていること

最近お客さんから「ネットで調べたら、これ交換したら直るって書いてあって」とか「AIに聞いたら○○が原因って言われたんですけど」って言われることが、ほんとに増えました。

正直、なら自分でやってよ、って思う日もあります(笑)。でも、ちょっと考えさせられるんですよね。AIってもう、こういう普通のやり取りの中に、当たり前みたいに入ってきてるんだなって。

正解を出すような記事じゃないです。っていうか、正解なんて僕もわかんないんですけど。AIに仕事を奪われるのか、みたいな話が、僕からすると今どう見えてるか。それをそのまま書いてみます。たぶん途中で脱線します。

📌 先に言っておくと、AIはまだ、そんなに怖い存在じゃないです。でも「知ってる人が有利になる」流れは、確実に進んでる。そして今は、ついていく人とそうでない人が、まだ平行に走れてる時間だと思っています。この記事は、その「平行に走れてるうち」に考えてることのメモです。

目次

「これ交換したら直りますよね」って言われる時代になった

部品を交換するだけなら、今はスマホで調べれば、けっこう誰でもできる部分があります。これはもう、ほんとにそう。場所も、外し方も、検索すれば動画まで出てくる時代ですからね。

だから僕は、そういう時はまず「とりあえず見てみますね」って言うんです。実際に見て、調べてきた通りの原因ならそのまま直します。隠す必要も、もったいぶる必要もない。

ただ、根本の原因が別のところにあることも、けっこう多いんですよ。表に出てる症状はひとつでも、その奥でほんとに起きてることは、また別だったりする。そこを見ないで部品だけ替えると、しばらくして同じ症状がぶり返す。

なので、原因が違うときはちゃんと説明します。理解できるように噛み砕いて話せば、たいていは納得してもらえる。「AIがこう言ってたのに」って食い下がられることは、実はあんまりないんですよね。ちゃんと筋道を見せれば、人はわかってくれる。ここはまだ、人がやる部分かなと思っています。

AIが出した答えに、気づけるか

AIは便利です。それは認めます。調べ物のスピードは、昔とは比べものにならない。でも、間違えることもあるんですよね。それっぽい顔して、平気で。

修理で言うと、「単体の故障」なのか「別の故障の副作用」なのか。ここを取り違えると、話がまるごと変わってきます。同じ警告灯、同じ異音でも、原因がぜんぜん違うなんてことは普通にある。

そしてAIは、わりと一つの答えに断定しがちなんですよ。可能性のいちばん高いやつを、言い切ってくる。だからこそ、その答えが本当に正しいのか、現物を見て「いや、これ違うな」と気づけるか。そこがこれから、差になってくる気がしてます。

同じ症状でも原因が分かれる図 同じ「症状」 例えば異音や警告灯 原因A:単体の故障 そこを直せば終わり 原因B:別故障の副作用 元を断たないと再発 AIは片方に断定しがち その答えを見抜けるかが差になる

道具がどれだけ進化しても、最後に「これは怪しい」って引っかかれる目があるかどうか。そこは残る気がします。少なくとも、今のところは。その目がないまま道具だけ持っても、たぶん使いこなせないんですよね。

そもそも、車にAIが載る日は来るのか

「いつか車にもAIが載るんですかね」って聞かれることがあるんですけど、僕の答えは「もう載ってますよ」なんです。みんな、気づいてないだけで。

たとえば、ぶつかりそうになると勝手に止まる自動ブレーキ。車線をはみ出さないように支えてくれるやつ。あれ、カメラが「あれは歩行者」「これは車線」って見分けてるんですけど、その見分ける部分は、機械学習=今どきのAIの仕事なんですよ。

つまり、運転支援を使ってる人は、もう普通にAIに乗ってるんです。なのに「自分はAIを使ってる」なんて意識してる人は、たぶんほとんどいない。まあ、これはAIの定義にもよるんですけどね。どこからをAIと呼ぶか、その線引き自体があいまいなので。

今の日本の車は電子制御の塊で、その一部は、もうこうやってAIになってる。ただ、「車が自分で故障を見つけて、自分で直す」みたいなところまでは、まだ来ていません。だから「もう載ってる、でもまだ全部じゃない」っていうのが、正確なところかなと。

⚠️ ただ、車両のデータを送る仕組み自体は、もう日本でも動いてます。トヨタの「eケア」(T-Connect)や日産の「NissanConnect」みたいなコネクテッドサービスがそれで、警告灯が点いたときなんかに車の情報がメーカー側へ送られて、ディーラーやコールセンターから連絡・アドバイスが来たりする。とはいえこれは「異常を知らせて、人につなぐ」段階で、車が自分で原因を特定して直すのとは、まだ別の話です。

どのメーカーが、どんなAIを作ってるのか

せっかくなので、ざっくりだけ。各社、けっこう色が違うんですよ。

テスラは「FSD」っていう、カメラだけで判断する大規模なAIを作ってます。世界中の何百万台ってテスラ車が走って集めたデータで、どんどん賢くなっていくタイプ。今いちばんAIらしい自動運転かもしれません。

日産は次世代の「プロパイロット」を、イギリスのWayveという会社と組んで開発中。面白いのが、“なぜそう運転したのか”を言葉で説明できるAIを研究してるところ。2027年度あたりの実用化を目指してるそうです。

トヨタは、派手な完全自動運転を前に出すより、安全装備をちゃんと普及させる方を大事にしてる印象です。その裏で、開発や社内の仕事には生成AIをしっかり使い倒してる。

ホンダはAI自動運転を2028年に延期して、今はハイブリッド優先に切り替えました。あと、日本勢は海外のAIに頼りきりにならないよう、自前のAIの土台を共同で作る動きも始めてます(ソフトバンク・NEC・ホンダ・ソニーあたり)。

こうやって並べると、「AIはこれから来る」っていうより、もう乗ってて、これからその範囲がじわじわ広がっていく、って感じなんですよね。

もし将来、ロボットが「故障の特定」から「精密な作業」まで全部できるようになったら——それは正直、こわいです。手の動き込みで人の代わりができる、ってことですから。でも今はまだ、そこじゃない。だから、過剰に不安がる必要もないかなと思っています。来るとしても、たぶん段階的にです。

【ここは濃いので、興味なければ飛ばしてOK】今の車に積まれてるAI、徹底的に解説してみる

⚠️ ここから先、けっこう技術の話に踏み込みます。正直、濃いです。「車のAIって、具体的に何が動いてるの?」ってところを、調べられるだけ調べて書きました。難しそうだなと思ったら、遠慮なく次の見出しまで飛ばしてください。それでも、この記事の話は普通に通じます。

① AIの「目」――カメラ映像を読むディープラーニング

今の運転支援の心臓は、カメラ映像の認識です。フロントガラスの内側についてる小さなカメラ、あれが映した景色を、AIがリアルタイムで「あれは歩行者」「これは対向車」「あの信号は赤」「これは白線」って、コンマ何秒で見分けてる。

これを支えてるのがディープラーニングという技術で、大量の画像を学習することで、雨の日も、夜も、逆光のまぶしい時間帯でも、だんだん見間違えなくなってきてます。昔のカメラは「条件が良ければ」って但し書きが必要でしたけど、そこがどんどん消えてきてるんですよね。

② AIの「五感」――センサーは何種類もある

人間が目とか耳とか肌で周りを感じるみたいに、車もいろんなセンサーで周囲を掴んでます。一個ずつ見ていくと、それぞれ性格が違って面白いんですよ。

カメラ(単眼/ステレオ)……いわば「目」です。色や形が分かるので、信号の色、標識、車線を読むのが得意。ただし夜や逆光、濃い霧には弱い。カメラには1個だけの「単眼」と、2個セットの「ステレオ」があって、ステレオは人間の両目と同じで、2つの映像のズレから距離まで測れます。

ミリ波レーダー……電波を飛ばして、跳ね返りで測るやつ。遠くまで届いて、相手の速度も分かる。しかも雨でも夜でも安定して使える、悪条件に強いタイプです。弱点は、小さいものや細かい形を見分けるのが苦手なところ。

LiDAR(ライダー)……レーザー光を四方に飛ばして、周りを精密な3Dで描き出す。形をかなり正確に掴めます。昔は高価でなかなか載せられなかったけど、だんだん普及してきました。

超音波センサー(ソナー)……これがいわゆるウルトラソニック。音波で近く(10mくらいまで)を測ります。バックする時の「ピー……ピピピ」ってやつ、あれです。駐車時の障害物検知やコーナーセンサー、自動駐車で活躍する、地味だけど一番身近なセンサーかもしれません。

で、これを全部いっぺんに使って、AIがまとめて1枚の「周囲の地図」に組み上げる。これをセンサーフュージョンと言います。カメラには見えなかったものをレーダーが捉えてた、みたいに、お互いの弱点を埋め合うんですよね。本格的な自動運転車だと、カメラ6個・ミリ波レーダー5個・LiDAR1個・超音波センサー12個、なんて構成もあります。

各メーカーの運転支援、名前も中身もぜんぶ違う

この「何を、どう組み合わせるか」に、各社の個性がはっきり出るんですよ。名前も全部バラバラ。ざっと並べてみます。

スバル「アイサイト」……スバルはとにかくカメラにこだわってます。ステレオカメラ(2眼)に広角の単眼を足した3つのカメラで、前を立体的に見てる。最新の「アイサイトX」は、そこに準天頂衛星「みちびき」のGPSと3D高精度地図を組み合わせて、高速道路の渋滞時に約50km/h以下で手放し運転(ハンズオフ)までできます。ただ、これもレベル2の範囲内です。

トヨタ「Toyota Safety Sense」……単眼カメラとミリ波レーダーの組み合わせが基本。2015年から幅広い車種に積んできた、堅実な普及型です。上位の「アドバンスト ドライブ」では、高精度地図を使ったハンズオフもやってます。

ホンダ「Honda SENSING」……基本は単眼カメラ+ミリ波レーダー。「SENSING 360」で全方位をカバーする方向に進化しました。さらにレジェンドに積まれた「SENSING Elite」は、カメラ2・ミリ波レーダー5・LiDAR5・ドライバー監視カメラ・高精度地図っていう、てんこ盛りの構成で、日本で初めて自動運転レベル3を実現しています(高速渋滞時など、条件付きで)。

日産「プロパイロット」……上位の「プロパイロット2.0」は、3D高精度地図とGPS、カメラ、レーダー、ソナーを組み合わせて、ナビと連動したハンズオフ運転を実現してます。

ほかにも、マツダの「i-ACTIVSENSE」、三菱の「e-Assist」、スズキの「スズキ セーフティ サポート」、ダイハツの「スマートアシスト」と、各社それぞれ。今や軽自動車にもしっかり積まれる時代です。テスラだけはちょっと毛色が違って、レーダーもLiDARもほぼ使わず、カメラだけで全部やる、っていう尖った思想を取ってます。

同じ「運転支援」って言葉でも、中で何を使って、どう判断してるかは、メーカーごとにぜんぜん違う。これ、知れば知るほど面白いんですよ。そして、ここまで構成が違うと、さっき出てきた校正(エーミング)も車ごとにやり方が変わってくる。だから余計に、ちゃんと分かってないと触れないんです。

③ ここが革命――「ルールベース」から「丸ごと学習」へ

これがいちばん面白いところかもしれません。少し前まで、自動運転のソフトは「ルールベース」でした。つまり人間が「こういう時はこうしろ」を、ひとつひとつ手で書いてた。赤信号なら止まる、前の車が近づいたら減速する、っていう規則の積み重ね。

でもテスラは、最新の「FSD」というシステムで、そのやり方をほぼ捨てたんです。カメラの映像を入れたら、ハンドルやアクセルの操作が出てくるまでを、丸ごと一つの巨大なニューラルネット(人間の脳を真似た仕組み)で処理する。「エンドツーエンド」と呼ばれてます。規則を教えるんじゃなくて、何百万台ぶんの人間の運転データを見せて、AI自身に運転を覚えさせる、っていう発想です。

その中で使われてる「占有ネットワーク(Occupancy Network)」という技術がまたすごくて。カメラの映像だけから、「ここは物体」「ここは通れる空間」って、周りを丸ごと3Dで把握する。人間が写真をパッと見て空間をつかむのに近いことを、機械がやってるわけです。

この「丸ごと学習」方式は、日産が組んでるイギリスのWayveも同じ路線。これからの自動運転は、人が規則を書く時代から、AIがデータから学ぶ時代へ、わりとはっきり移りつつあります。

ルールベースとエンドツーエンドの違い 昔:ルールベース 今:エンドツーエンド 人が規則を1つずつ書く 赤信号 → 止まる 前が近い → 減速 …規則を足し続ける 想定外の場面に弱い カメラ映像(入力) 巨大ニューラルネット データから運転を学習 ハンドル・アクセル操作 未知の場面にも柔軟

④ 車の「頭脳」――車載AIチップ

これだけの処理を車の中で一瞬でやるには、専用のコンピューターチップがいります。スマホのチップの、桁違いに強いやつだと思ってください。ここも各社、激しく競い合ってる。

NVIDIA(エヌビディア)の「DRIVE Thor」が量産段階に入っていて、いろんなメーカーの車に載り始めてる。Mobileye(モービルアイ)の「EyeQ」はカメラ中心で省電力なのが強み。Qualcomm(クアルコム)は、運転支援とカーナビ画面みたいなものを1チップにまとめる方向。テスラは自社で運転用のAIチップ(AI5、AI6)まで作ってます。

つまり車って、今や「タイヤのついたコンピューター」に近づいてる。エンジンの会社が強い時代から、チップとソフトの会社が主導権を握る時代へ、構造そのものが変わりつつあるんですよね。

⑤ 車がしゃべる――車内の生成AI

運転だけじゃなくて、車内の会話にもAIが入ってきてます。メルセデス・ベンツは、MBUXという車載システムにChatGPTを組み込んでる。「ハイ、メルセデス」で話しかけると、決まりきった返事じゃなくて、自然な会話で答えてくれる。目的地の詳しい情報を聞いたり、なんなら夕飯のレシピを提案してもらったり。

裏側はマイクロソフトのAzure OpenAIとBing検索を使っていて、最新の情報も拾える。カーナビの音声操作が「決まったコマンド」から「会話」に変わってきてる、って感じです。

⑥ 買った後も進化する車――SDVとOTA

SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)という言葉も、最近よく出てきます。ざっくり言うと「ソフトで定義される車」。スマホがアップデートで新しい機能を増やすみたいに、車も買った後にソフトを更新して進化していく、っていう考え方です。

これを支えるのがOTA(オーバー・ジ・エア)。無線で車にソフトを送り込む仕組みで、機能を追加したり、不具合を直したり、車の状態を遠隔で診断したりできる。電気自動車(BEV)はソフトで制御する部分が多いので、このSDVとめちゃくちゃ相性がいいんです。

⑦ 整備に効いてくる――予知保全

で、ここが僕ら直す側に直接効いてくる話。OTAで車のデータを集め続けると、「そろそろこの部品が危ない」という予兆を、壊れる前に掴めるようになってくる。予知保全って言います。

さっき出てきたトヨタのeケアや日産のNissanConnectも、入り口はここ。今はまだ「警告灯が出たら知らせる」レベルだけど、これがデータの蓄積で「出る前に分かる」方向へ進んでいく。故障してから直すんじゃなくて、故障する前に手を打つ。整備のかたちが、ちょっとずつ変わるかもしれない部分です。

⑧ 作る側にもAI――開発と工場の生成AI

最後に、車に載るんじゃなくて、車を作る側の話。トヨタは「O-Beya(大部屋)」という生成AIの仕組みを作っていて、振動を担当するAI、燃費を担当するAI、設計を担当するAI……みたいに、9つ以上のAIエージェントが動いてるそうです。

しかもその知識のもとには、過去の設計報告書とか、法規制の最新情報とか、ベテランの手書きメモまで入ってる。要は、ベテランの頭の中をAIに引き継がせてるわけです。工場でも、車体塗装の300以上の色管理項目をデジタル化したりしてる。

車そのものより、こういう「作り方」の方に、生成AIは先にがっつり入ってるんですよね。

⑨ 賢くなるほど、「合わせる」責任が重くなる――エーミング

ここまで「すごい技術」の話をしてきましたけど、現場の僕がいちばん伝えたいのは、むしろその裏側なんです。

これだけセンサーが賢くなると、その「目」をきっちり合わせる作業が、とんでもなく重要になる。エーミング(校正)っていうんですけど。カメラやレーダーが「どこを見てるか」を、メーカー基準ぴったりに調整する作業です。

フロントガラスを交換したり、センサーのついたバンパーを外したり、ちょっとぶつけてフレームをいじったり。それだけで、カメラやレーダーの向きがコンマ数度ずれます。見た目は何ともなくても、です。

その数度のズレで、自動ブレーキが効かなかったり、逆に何もないのに急ブレーキがかかったりする。実際、ミリ波レーダーの校正ミスで、前の障害物を認識できず自動ブレーキが作動しなかった、っていう事例も起きてます。

自動ブレーキって、いわば「最後の砦」なんですよ。そこがズレてるのに気づかないまま納車したら、それはもう賭けです。お客さんの命を、運任せにしてることになる。これ、けっこう怖い話なんです。

だから日本でも、2020年に「特定整備」っていう制度ができて、カメラやレーダーの整備は、認証を受けた工場じゃないとやっちゃいけないことになりました。2024年4月からは、認証なしでこれをやると違法です。

でも僕が言いたいのは、規制で縛られてるからやる、って話じゃないんです。賢い車ほど、それを合わせる人間の責任が重くなる。触る側が、自分の責任として分かってないといけない。ここだけは、絶対に賭けにしちゃいけない部分なんですよ。

正直なことを言うと、僕、義務とか資格とかって、あんまりどうでもいいと思ってるんですよ。だって、当たり前のことだから。決まりだからやるんじゃなくて、お客さんの命がかかってるんだから、やる。ただそれだけの話なんです。

むしろ引っかかるのは、資格を持ってる人でも、やってない現実があること。資格があっても、ちゃんと確かめてなかったり、手を抜いてたり。厳しくされたからしぶしぶやる、いや、厳しくされてもやらない人はやらない。で、そういうのが続くから、規制ばっかりがどんどん増えていくんですよね。

これ、そろそろ国も「資格」ってものを考え直す時期なんじゃないかな、って思います。資格を取るための資格、みたいなのまで出てきて、正直ちょっとアホらしい。紙を持ってるかどうかより、ちゃんとやってるかどうか。本当は、そこだけのはずなんですよ。

今のやり方って、過去のルールに足したり引いたりを繰り返してるだけ、って気がするんですよね。穴が見つかるたびに継ぎ足して、また一つ縛りを増やして。その繰り返し。

そうじゃなくて、一回、前提から考え直した方がいい。そもそも資格って、何のためにあるんだっけ?っていう、そこに戻る。ちゃんとできる人を見分けて、お客さんを守るためのはずなんです。それが、いつの間にか「資格を持ってること」そのものが目的になっちゃってる。順番が、逆なんですよ。

そして、これはエーミングに限った話じゃないです。整備でも、車を売るのでも、「ひとつ見逃したら、ほかが全部きちんとしてても崩れる」っていう前提で向き合うべきものだと、僕は思ってます。

「安いです」「早いです」って、ぱっと見はすごく魅力的ですよね。でも、その安さや早さが、本当は見ておくべきところを飛ばした結果だとしたら。それはお客さんにとって、本当に得なんだろうか、っていつも引っかかるんです。

一見お得に見えて、実は大事なところを削ってるだけ、ってことは起こりうる。手間をかけて、見逃しがないか確かめる。それは特別なことでも、おまけのサービスでもなくて、お客さんに対する当たり前のことだと思ってます。そこは、譲りたくない。

……はい、濃かったですね(笑)。ここまで読んでくれた人、ありがとうございます。要するに、今の車って「目(カメラ認識)」「五感の統合(センサー)」「頭脳(チップ)」「学び方(エンドツーエンド)」「会話(生成AI)」「進化(SDV)」、ぜんぶにAIが絡んできてる。気づいてないだけで、もうそういう乗り物になってる。そして賢くなるほど、それを合わせて、確かめる人間の責任も、重くなっていくんです。

整備する側にも「サブスク」が入ってきた

面白いのは、AIっぽい流れが、車そのものじゃなくて、僕ら直す側の道具に先に入ってきてることなんですよね。

たとえば、整備工場向けのクラウド型の業務支援システム。ブロードリーフの「Maintenance.c(メンテナンスドットシー)」なんかが代表的で、これがクラウドで動いていて、料金は月額のサブスク型です。顧客や車両の管理、伝票、書類作成まで、ネット上でやれる。

しかもこういうシステムは、車検証のIC化とか、OBD車検(スキャンツールを使う車検)みたいな、国の制度の変化に合わせて、機能がどんどん増えていくんですよ。制度が変わるたびにソフトが追従していく。こういう同系統のクラウドソフトは、ほかにもいくつか出てきています。

つまり、車に高度なAIが載るより先に、「整備のまわり」がどんどんデジタルになって、月額で借りる形に変わってきてる。地味だけど、今いちばん起きてる変化って、たぶんこれなんですよね。

メーカー側と整備側、2つの層の図 よく混ざるけど、別の層の話 ① メーカー側のコネクテッド 車(警告灯) メーカーへ送信 eケア / NissanConnect ディーラーが連絡 ② 整備側の業務クラウド(サブスク) 整備の現場 スキャンツール等 クラウド管理システム Maintenance.c など 月額で利用

進化を楽しむ人と、同じことを続けたい人

陸運局とか軽自動車協会に行くと、いろんな人と顔を合わせるんですよね。そこでちょっと話したりするんですけど、話題は今の修理のことだったり、これから先どうなっていくんだろう、みたいなことだったり。そういう中に、最近は当たり前みたいにAIの話もまざってくる。そもそも車って技術の塊なので、その技術を知らないと、もう触ることすらできない世界なんですよ。昔みたいに、勘と経験だけでどうにかなる範囲が、どんどん狭くなってる。

ただ、ついていけてない感じの空気の方が多い印象です。新しいものが入ってくると、そこで止まっちゃう。そういう人は、わりといる気がします。

進化を楽しんでる人と、同じことを永遠にやっていたい人で、なんとなく分かれてる気がするんですよね。で、これって効率の話じゃないんですよ。「楽したいかどうか」とはちょっと違う。

知識への欲があるか。できないことを、できるようにしようとするか。それとも、できないことはやらない・誰かに任せる、と考えるか。たぶん、その違いなんだと思います。同じ年数やってても、ここでだいぶ差がついていく気がしています。

スキャンツールが、ごまかせない世界を作った

スキャンツールは、もうとっくに普及してます。今はこれがないと、何もできないと言っていい。そこにAIっぽい仕組みが乗ってきてる、っていうのが今の感じです。

このスキャンツール、地味だけどすごいのが、いろんな履歴が見れることなんですよ。たとえば「この前ちょっと診てもらったんですけど、なんか気になって」って相談されたとして、つないで見れば、ちゃんと作業した形跡があるかどうかも、わりと分かっちゃう。

これって、お客さんにとっては良いことですよね。ちゃんとやってもらえたのか、後からでも確かめられるわけですから。透明なんです。

そして、直す側・売る側にとっても、身が引き締まるという意味で、僕は良いことだと思っています。ごまかしが効かなくなるほど、ちゃんと知ってる人・ちゃんとやる人の価値が上がっていく。そういう方向なんですよね。技術が進むほど、誠実さがそのまま見えるようになる。

「これ、できないのかなー?」から、診断ツールを作り始めた

怖がって眺めてるだけだと、つまらないじゃないですか。なので僕も、自分で手を動かしてます。AIで故障診断を補助するツールを、作り始めました。

きっかけは本当に軽くて、「これ、AIでできないのかなー?」です。それだけ。で、始めてみたら、正直まだ半分もできてないです(笑)。

何が大変かって、データなんですよ。毎日コツコツ入れても、数万件は入れないと使いものにならない。AI側の使用上限にもぶつかる。そのあいだも、画面を使いやすくしたり、項目を足したり、いじり続けてる。完成は、まだ全然見えてないです。

そもそも完成するかも分からない。最終的には車両に実際つなぐところまでやるつもりなので、本当のところは、やってみてからですね。あと、これは大事なことなんですけど、理解してない人に渡すのは危ないとも思ってます。ツールは渡せても、知識までは渡せないので。さっきのAIの話と、まったく同じなんですよ。答えを出す道具があっても、それが正しいか分かる人がいないと、かえって危ない。

需給バランスが崩れたとき、何が起きるか

AIそのものより、僕は需給バランスの方が気になってます。

人が減って足りなくなると、最初は高い給料を出してでも集めようとするんですよ。でも、それでコスパが悪くなってくると、いずれ別の手段に代わっていく。機械化なり、自動化なり。これは車に限った話じゃなくて、どの業界でもある、わりと自然な流れだと思うんですよね。そこは、まあ怖いです。

でも、今はまだ平行に走れてる。ハイテク派とローテク派が、同じ道を並んで走ってる時間なんですよ。どっちかが一方的に消える、みたいな段階じゃない。これがいつまで続くかは分からないけど、少なくとも今はそう。だから、今のうちに少しでも前に行っておきたい、っていう気持ちです。

面白いけど、難しい。でも、それでいい

ここまで不安な話ばっかりしてきましたけど、それでも面白いんですよ。新しいものが入ってくるのは、純粋に。それと同時に、難しい問題でもある。簡単に「大丈夫」とも「もう終わりだ」とも言えない。そのどっちでもない、っていうのが本音です。

ただ、一つだけ確実なのは、AIに限らず「知ってる人が有利」ってことです。これは昔からずっと変わってない。スキャンツールの履歴ひとつ取っても、知ってる人は見える、知らない人は見えない。道具が変わっても、ここだけは変わらないと思います。

ツールが進化しても、それを使ってちゃんと対応していける。10年後、それくらいできてれば僕はまあいいかな、と思ってます。すごい人になりたいわけじゃない。ただ、置いていかれない程度には、並んで走っていたい。

答えは、まだ出てないです。でも、平行に走れてるうちに、ちょっとずつ前に行く。今はそれくらいの気持ちでいます。怖いけど、面白い。

最後に、ここまで読んでくれた人に、ひとつだけ。

これ、ずっと車の話として書いてきましたけど、たぶん車業界に限った話じゃないです。どの業界でも、もう同じことが起きてる。気づいてるか、まだ気づいてないか、の違いだけで。そして正直なところ、これを丸ごと避けられる場所って、もうほとんど無いと思ってます。あくまで僕個人の感覚ですけど。

だったら、来るものを押し返そうとするより、いったん受け入れて、考え方をちょっと変えて、動いてみる。そっちの方が、たぶん楽だし、面白い。僕もまだその途中で、偉そうなことは言えないんですけどね。

怖がって立ち止まるより、並んで走りながら考える。今のところ、それがいちばんいいんじゃないかなと思ってます。一緒に、ちょっとずついきましょう。

📋 今日の小さな一歩

大層なことじゃなくて、まず自分の仕事の中で、何か一つだけAIに触らせてみる。それくらいから、でいいんじゃないかなと。僕もそんな感じでやってます。下に、実際にやってることを書いた記事を置いておくので、よかったら。

よくある質問

Q. AIで車は自分で故障を直せるようになりますか?
今の日本の車は電子制御は当たり前ですが、車自身がAIで自己診断・自己修復するところまではまだです。中心は運転支援です。トヨタのeケアや日産のNissanConnectのように、警告灯などの情報をメーカーへ送る仕組みは日本でも動いていますが、それは異常を知らせて人につなぐ段階です。
Q. 車の運転支援って、もうAIなんですか?
AIの定義によりますが、カメラが歩行者や車線を見分ける部分には機械学習(今どきのAI)が使われています。なので自動ブレーキやレーンキープを使っている人は、気づかないうちにAIを日常的に使っていることになります。一方で「ぶつかりそうなら止める」といった判断ロジック自体は従来型の制御で、どこからをAIと呼ぶかの線引きはあいまいです。
Q. フロントガラス交換やセンサー周りの修理のあと、必要な作業はありますか?
エーミング(カメラ・レーダーの校正)が必要になることが多いです。フロントガラス交換やセンサー付きバンパーの脱着、フレーム修正などでセンサーの角度がわずかにずれると、自動ブレーキなどが正しく働かなくなるおそれがあるためです。日本では2020年からの特定整備制度により、認証を受けた工場での作業が必要で、2024年4月以降、認証なしの電子制御装置整備は違法です。
Q. 整備工場の管理システムも、クラウド・サブスクになっているんですか?
はい。ブロードリーフの「Maintenance.c」のような整備工場向けのクラウド型業務支援システムがあり、月額で使う形が増えています。顧客・車両管理や伝票に加え、OBD車検・特定整備・車検証のIC化といった制度変更にも対応していきます。同系統のソフトはほかにもあります。
Q. AIで調べた答えを持って修理を頼んでも大丈夫ですか?
まず見てもらうのがいいと思います。同じ症状でも原因が違うことが多く、交換だけでは直らない場合があるからです。その通りなら、もちろんそのまま直せます。
Q. AIで車の整備の仕事はなくなりますか?
すぐには、というのが正直なところです。むしろ、AIの出した答えが正しいか見抜けるスキルの価値が、これから上がっていくと思っています。
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